建築のおしごと

女性建築士の建築ブログ。建築の世界に興味のある学生さんや一般の方に建築に興味を持って頂けたらと思います。建築のお仕事の内容や、建築のお仕事をしたい学生さんへの勉強の仕方、 建築の楽しみ方、建築業界での女性の働き方などについて、つらつらと書いていきたいと思います。プロフィールのURLからそれぞれのテーマごとのまとめページに飛ぶことができます。

建築のお仕事って何?その5:設備設計

設備設計は、建築に取り付く電気・空調・給排水・防災関係の位置と配線を設計します。

電気とは、照明やコンセント、電話線など、空調はエアコンやキッチンのレンジフードの排気など、給排水はトイレや浴室・キッチンなどの水回り関連など、防災はスプリンクラーや煙感知器などのことです。

上記のように簡単に説明したとしても、これらは互いに密接に関連しているのがなんとなく分かると思います。

例えばお風呂には給排水はもちろん換気扇や照明もとりつきますし、空調も床暖房などは電気で熱を発生させます。

設備と一言で表現していますが、以前も述べましたが、設備は人体でいう内臓や筋肉、血管などの中身であると言えます。

当然、これらがうまく機能するかしないかは建築の使い勝手に大きく影響しており、建築では極めて重要なファクターであると言えます。

また近年では法律である規模以上の建物は集合住宅を除いて定められた省エネルギー基準を満たさなければならず、設備設計者は使用されるそれらの設備がどれくらいの電力を消費するのか複雑な計算をしなければいけません。(この省エネルギーに関する計算は意匠設計にも影響がありますが、設備設計がカギを握っているといえます)

非常に高度な技能職で、有名ないわゆる建築家と言われる先生方でも、この設備設計者なしにはお仕事はできないと言えると思います。

建築のお仕事って何?その4:意匠設計

意匠設計は建築のデザインをする専門で、私自身の専門でもあります。
建築のデザインをするためには、デザイン史、社会史、民俗学、歴史など、様々なジャンルのものに触れ、その地域や社会風土に見合うデザインをする必要があります。
また、お客様の要望を聞き、敷地ごとに決められた法規の条件に適合したデザインをつくり、図面を書き、そのデザインを実現するためにあらゆる専門分野との調整役となるなど、プロジェクト全体の要となる役職でもあります。
安藤忠雄さんや隈研吾さんなど、いわゆる世間一般で有名な建築家と言われる方は、この意匠設計者であることがほとんどです。
また建築家は時として建築士ではないことがあります。
どういうことかというと、日本の法律では建築士の資格を持っていなくても、建築士の資格を持っている人が設計チームに入っていればよいのです。

建築のお仕事って何?その3:建築ってどうやって作るの?

建築のそれぞれの専門分野を理解するために、建築をどうやって作るのか、みなさんに一番身近な建築である家を例に、実際にそのプロセスを大まかに見ていきたいと思います。

まず1番に決めなければいけないのは、どこに家を建てるのか、つまり敷地です。建築は敷地がないと建てられません。

敷地が決まったら、意匠設計者の登場です。意匠設計は、お客さんとどんな家を作るのか設計要件を決め(家の大きさ、部屋の数や広さ、素材など)、敷地ごとに決められた法律条件と照らし合わせながら、大まかなデザインをまず決めます。

大まかなデザインが決まったら、設備設計者と構造設計者の登場です。設備設計は意匠設計が作ったデザインに、照明機器や電気配線、トイレやキッチン・お風呂の給排水管、エアコンの位置や空調配管・室外機の場所などを決めていきます。構造設計は意匠設計が作ったデザインに対し、柱や床、梁の寸法など、家の骨組みを決めていきます。人の身体に例えると、意匠は肌の色や髪の長さなどの外観、構造は骨、設備は内臓や血管です。

設計をしていくと、例えば配管を通す為のスペースが足りないとか、柱を追加する必要があるけれどそこが部屋の真ん中になってしまうですとか、意匠・設備・構造の三者でうまく納まらない箇所が出てきます。意匠設計はリーダーシップをとってこれらを調整して、デザインを作り上げていきます。

デザインを作ったら意匠設計はお客さんにそれを見せ、内容を確認してもらいながらデザインの変更やより詳しい内容を決めていき、またそれを設備と構造に伝えて調整して…を繰り返して、家の建築図面を作り上げていきます。

建築図面が完成したら、その家が法律に適合しているか、第三者機関に確認をしてもらいます。この法規の確認を確認申請と言って、確認申請をするのが確認申請機関です。

確認申請が無事に通ったら、実際に大工さんに家を建て始めます。この工事を進めるのが施工者です。事故のないように工事現場の環境を整え、工事をどのように進めるかのスケジュールや作業方法を決め、材料や職人さんを手配して、家を建てていきます。その間、意匠・設備・構造の設計者はそれぞれ図面通りに工事が進んでいるか確認をします。

家が完成したら確認申請機関も設計図通りに工事が行われていることを確認し、間違いがあれば是正工事をします。確認申請期間がOKを出せば、家が完成となるのです。

もちろん、このプロセスの中には更に細かな作業が山のようにあるのですが、大まかな流れとそれぞれの分野の役割はどんな規模の建築でも変わらないと思います。

建築のお仕事って何?その2:どんな専門分野があるの?

建築の専門分野は実に様々なものがありますが、建築士試験の項目に従ってとても大きく分類すると

・意匠:デザインを決める

・設備・環境:機能を決める

・構造:建物の骨組を決める

・施工:建物を作る

・法規:法律に適合しているか確かめる

があります。

細かく言い始めるとキリがないほどたくさんの専門分野がありますが、建築士の試験科目がこの5つの項目で構成されているように、とても大きく分けるとこの5つになると考えても良いと思います。

これらの5つの専門分野の役割を理解するために、建築がどうやって計画されて作られていくのか、次の記事でご説明したいと思います。


テーマ別 まとめページ

記事をテーマごとにまとめたページです。

それぞれのテーマのまとめページから、それぞれの記事を探すことができます


建築のお仕事 まとめページ

https://charlotte-design.hatenablog.com/entry/2019/02/23/145048

建築のお仕事 まとめページ

建築のお仕事ってどんなことするの?

その1:そもそも建築士って何?

https://charlotte-design.hatenablog.com/entry/2019/02/23/140313

その2:どんな専門分野があるの?

https://charlotte-design.hatenablog.com/entry/2019/02/23/152118

その3:建築ってどうやって作るの?

https://charlotte-design.hatenablog.com/entry/2019/02/24/000304

その4:意匠設計

https://charlotte-design.hatenablog.com/entry/2019/02/24/233636

その5:設備設計

https://charlotte-design.hatenablog.com/entry/2019/03/07/004132

建築のお仕事ってどんなことするの? その1:そもそも建築士って何?

みなさんは「建築士」と聞いて、どんなお仕事を想像するでしょうか?

具体的にはどんなことをするのか、よく知らない方がほとんどだと思います。


実は建築士というのは資格の名前で、そのお仕事の内容は実に様々です。

かなり細かく専門分野が分かれていて、殆どの人が特定の専門分野に従事しています。

そして、それぞれの専門分野については詳しいけれど、ほかの専門分野については基礎的なこと以外はほぼ分からないというケースが一般的です。

無理矢理まとめるならば、「建築について各分野の基礎的な知識を持っていると証明された資格」が建築士です。

そして建築のお仕事の中には、建築士の資格を持っていなくても出来る仕事もたくさんあります。


具体的にどのようなことをするお仕事があるのか、詳細をこれから少しずつご紹介していけたらいいなと思います。